黄門さまと緑所ヶ淵(勝田の民話から)23/23

(市報かつた昭和62年3月25日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

黄門さまと緑所ヶ淵

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池の中に十一面観音さまが、まばゆいほど金色に輝いていたのです

枝川と水戸市城東地区を結ぶ新水戸大橋下あたりで、那珂川がぐるっと曲がって流れるところがあります。むかしから、このあたりはだれ一人として川底を見た者はないといわれるほど、それはそれは深いところで、水の色がちょうど緑青をおびた色をしているところから、緑所ケ淵とよばれています。この緑所ケ淵には、竜がすんでいるともいわれていました。

ある年の夏、この話を聞いた水戸黄門さまは、家来を連れて枝川村にやってきました。

「緑所ケ淵とやらには竜がすんでおるそうじゃが、余が直に確かめてしんぜよう」

「恐れながら申しあげます。こごではいぐら泳ぎが達者な村の若い衆でさえ、決して泳がねえどこでごぜえます」

村役人も家来の者も、黄門さまを戒めました。けれども、黄門さまは泳ぎには大層自信があったとみえて、みんなか反対するのを押し切り、大きく息を吸い込むと緑所ケ淵へ、ザブーンと飛び込みました。

川の中は、うずを巻いて流れていました。黄門さまが川底めがけてもぐっていくと、大きな洞穴がありました。さらに、奥へ奥へと暗やみの中をもぐっていくと、明かりが差し込むところがありました。黄門さまは水の中から顔を出しておどろきました。そこは、なんと堀口村の光明寺下にある池だったのです。しかも、池の中に十一面観音さまが、まばゆいほど金色に輝いていたのです。

「緑所ケ淵は光明寺の池に続いておったのか。どうりで一深いわけじゃ。観音さまの後光を竜と間違えたのじゃろう」

黄門さまはさっそく和尚さんをよんで、十一面観音さまをお寺の秘仏として永久に開扉を禁じるよう命じました。もしも禁を犯す者があれば、たちどころに両目を失うといわれています。

この十一面観音さまは、今も光明寺の本尊として観音堂の厨子に安置されており、むかしから頭痛の神さまとして多くの女性に信仰されています。

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