娘に化けたキツネ(勝田の民話から)22/23

(市報かつた昭和62年3月10日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

娘に化けたキツネ

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狐は赤や黄色に紅葉した山ブドウの蔦を食い切ってそれを体にぐるぐる巻きつけると突然美しい娘に化けたのです

むかし、江戸時代のころ、外野村に次介という、川漁の好きな若者がいました。
外野村や大島村の田んぼのきわを流れる小川は水がきれいで、フナやウナギがたくさん住んでいたのです。

秋も深まったある日、次介はバカマチ(馬化待ち)に出掛けました。バカマチとは川幅一杯に、竹をすき間なく差して柵を結び、一カ所だけ開けた所に網を張っておいて、通り抜けようとするウナギを一晩中待ち構えて、つかまえる漁のことです。

次介は川のきわに夜露をしのぐために、篠で囲ったバカマチ小屋の中で、網先につけた脈糸を手にして、ウナギが入るのを待っていました。そこへ、小屋から五〜六間ほど離れた所に、大きなキツネが一匹現れました。次介は小屋の中で、じっと息をこらしてキツネのようすをながめていました。

ところが、あっと驚くようなことがおこりました。狐は赤や黄色に紅葉した、山ブドウの蔦を食い切って、それを体にぐるぐる、ぐるぐる巻きつけると、突然美しい娘に化けたのです。次介は一瞬のできごとに、声も出ませんでした。

娘に化けたキツネは、田彦村と市毛村境の谷中田んぼを通り、市毛村の方へ向かいました。

次介は行先を確めようと、後をつけ始めると、途中で市毛村の麦飯佐平という若者に会いました。佐平は大飯食いで、年がら年中麦飯ばかり食べ、豆腐なら20丁は食べるという近郷でも名の知られた、ばか力のある若者でした。

「今そごらで娘に会ったっぺ、あれはキツネめなんだ」。「往還囗で会ったが、あんてな器量のいいキツネめっちゃあんめえ」。

麦飯佐平もはじめのうちは、次介の言葉を信じませんでしたが、納得してついて来ました。

ところが、意外なことにキツネはお寺へ入りました。和尚さんも娘の正体がキツネとは知らず、ごちそうを作り待っていたのです。次介と麦飯佐平は村中の若い衆を集め、お堂のまわりを取り囲むと中に踏み込んで取り押さえました。娘はたちまち化けの皮をはぎ取られ、もとのキツネになりました。

次介と麦飯佐平は、キツネが何度も何度も頭を下げて謝るので、放してあげたいということです。

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