起き上がりの松(勝田の民話から)18/23

(市報かつた昭和61年12月25日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

起き上がりの松

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若者は素早く道端にあった肥寵をすっぽり頭からかぶって身を隠しました

下高昜の鉾香取(ほこかとり)神社南側の田んぼに面したあたりに、近年まで「起き上がりの松」とよばれた名木が一本立っていました。この松には、次のような話が伝えられています。

昔、ある村の者が、村松の虚空蔵様の近くにある阿漕浦とよばれる池へ漁に出掛けました。この池は、村松の大神宮さまの神聖な池で、漁をすることはかたく禁じられていたのです。それとは知らず、若者が漁をしているところへ、近くに住むじい様が通りかかりました。

「おめえ、どこのわげえもんだ。こごにはかだ(片)目の魚めとったらばちがあだっと」

「そんてなごだあ迷信だ」

若者は、じいさまの戒めにも耳を傾けようとせず、せっせと投綱をうって漁を続けていました。

するとそこへ、どこからともなく一本の鉾をくわえた鳥が飛んできました。白鳥はまるで若者を追い払うかのように、頭上を飛びかいはじめました。若者はやっと、大神宮さまの怒りにふれたと知ると、恐ろしくなって、一目散に須和間(すわま)村を通って高野村から高場村へと逃げました。けれども、白鳥は執拗に若者を追いかけてくるのです。

若者が息を切らしながら外野村境あたりまで逃げてきたとき、村ぴとが道端にコエカゴ(肥龍)を置いて、野良仕事をしていました。

「おらあ、もうこれ以上は逃げらんねえ。大神宮さま、もう二度と魚めとんねえがら勘弁してくんにや」

若者は素早く、道端にあった肥寵をすっぽり頭からかぶって、身を隠しました。白鳥は、若者が肥龍の中に隠れでいることに気かっかず、とらとう見失ってしまいました。

それから何日か過ぎたある日、下高場村で不思議なことが起こりました。田の端に大風で倒れかかっていた大きか松の木が、ひとりでに起きあがっていました。しかも、松の枝に、白鳥がくわえてきた一本の鉾が掛かっていたのです。

神様が飛来してきたことを知った村びとは、近くに祠を建てて、鉾をまつりました。これが現在の、鉾香取神社だと伝えられています。また、「起き上がりの松の根もとには、きれいな泉がわいていて、この泉は阿漕浦まで続いていたということです。

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