怒った天王さま(勝田の民話から)17/23

(市報かつた昭和61年12月10日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

怒った天王さま

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本田の氏神さま何だがしんねえが西原の方さうづってきっちまったど、村中大さわぎだ

むかし、足崎村の本田(ほんでん)という所に、太郎兵衛という人の良いおじいさんがいました。ところが、太郎兵衛じいさまは鼻天狗がたまにきずで、何かにつけて人前で自慢したり、いばりちらすので、だれからも嫌われていました。

ある日、太郎兵衛じいさまが沢田あたりの海岸を歩いていると、妙に光り輝く流木を見つけました。

「こんてに光る木は、今まで見だごだねえ」

太郎兵衛じいさまは、その木を大事に持ち帰ると、さっそく村の氏神さまに御神体として祭りました。

それ以来、氏神さまは年々お盛りになり、三台の山車が繰り込むほど、村をあげてお祭りをするようになりました。鼻天狗の太郎兵衛じいさまは、ますますいばりちらすようになりました。

「氏神さまがこんてににぎやがになったな、おれがめっけできながらだ。おれのおかげなんだぞ」

お祭りでみんな楽しく酒を飲んでいる席で、太郎兵衛じいさまは例によって、またいばりはじめた。そばにいた村びとは機嫌をそこねて、一人また一人、こそこそと席を立って帰ってしまいました。

ところが、あくる日のことでした。太郎兵衛じいさまが氏神さまへ行ってみると、祠ごと氏神さまは消えてなくなっていたのです。太郎兵衛じいさまは、真っ青な顔をしてあちこちさがしました。けれども、氏神さまはどこにも見当たりません。そこへ村びとが通りかかって、おどおどしている太郎兵衛じいさまを見て、わけをたずねました。

「本田のじいさま聞いでねえのげ。村の衆の話だど、本田の氏神さま何だがしんねえが、にしぱら(西原)の方さうづってきっちまったど、村中大さわぎだ」

太郎兵衛じいさまがあまりいばってばかりいたので、氏神さまが人しれずこっそり
と、よそへ移ってしまったのです。このことがあってから、太郎兵衛じいさまは心を改め、人前では決していばらなくなったということです。

この氏神さまとは、現在の深茂内(ふかもち)にある素鵞神社のことで、もとは北根にあり、今でもそこを古天王さまとよんでいます。

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