香起様の雨乞(勝田の民話から)3/23

(市報かつた昭和61年5月10日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

香起様の雨乞

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房田溜あたりから、一匹の竜が天に昇っていく姿が見えました

むかし、稲田村の東聖寺というお寺に、香起(こうき)様と呼ばれた、えらい和尚さんがおりました。この香起様がお経を唱えると、どんな病気や願いごとにも、たちどころに御利益がありました。

ある日、水戸の殿様の奥方が、難産でとても苦しんでいました。殿様は、御典医と呼ばれたおかかえの医者はもとより、領内の医者や祈祷師を呼んで診てもらいましたが、奥方は、ただ苦しむばかりでした。

この話を聞いた香起様は、早速お城へ行って、殿様に会いました。

「拙僧は、稲田村の東聖寺の住職、香起と甲す者でございます。奥方さまが難産で苦しんでいると聞いて、まかり越しました。拙僣におまかせください。ただし、唐紙を一枚いただきとう存じます」

殿様が、香起様に唐紙を与えると、さらさらと梵字を書き、お経を唱え始めました。

すると、間もなく奥座敷の方から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。元気な男の子が誕生したのです。殿様は大層喜んで、香起様にごほうびとして、葵のご紋入りの、けさを贈ってくれたということです。

それから何年間かたちました。稲田村の人々は、何日も何日も日照りが続き困っていました。

「今日、雨が降んねげれば稲もせんぜえ(前栽)もおしめえだ」

村の人々は、半ばあきらめていました。ところが、突然奇跡が起こりました。にわかに黒雲が立ちこめたかと思うと、突風が吹き出し、雨が激しく降ってきました。そして、村の南にある房田溜あたりから、一匹の竜が天に昇っていく姿が見えました。

村の人々は、恵みの雨のなかを房田溜へ行ってみると、ため池の前で、葵の紋入りのけさを着た香起様が、両手を合わせ、雨乞のお経を唱えていたということです。

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