華蔵院の化け猫(勝田の民話から)1/23

(市報かつた昭和61年4月10日号より。文・平野伸生 絵・穂垣智子)

華蔵院の化け猫

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大きな化け猫を中心に、猿やたぬきが、鳴り物入りでさわいでいたのです

むかし、湊村にある華蔵院という大きなお寺の近くに、たいそう腕のよい桶屋職人が住んでいました。

ある日、おけ屋は仕事を頼まれて、となり村の部田野という村へ5日間ほど通いました。湊村と部田野村との間には、小谷金原と呼ばれるさびしい野原がありました。

5日目のこと、おけ屋は、仕事じまいに酒や夕飯をごちそうになり、ごきげんで帰る途中のことです。ちょうど小谷金原にさしかかったとき、人の声とは似ても似つかぬ声が、がやがやがやがやと聞こえてきました。

「こんな夜ふけに、野原(のっぽら)でなにさわいでんだっぺ」

おけ屋は声のする方へそっと近づき、様子をみておどろきました。和尚さんの着るけさを身につけた、華蔵院とよばれる大きな化け猫を中心に、猿やたぬきが、鳴り物入りでさわいでいたのです。

つぎの日、朝早くおけ屋はお寺へ行き、和尚さんにタヌキが化けてけさを無断で着て、小谷金原で遊んでいたことを話ました。

和尚さんは猫をよんで、「おめえ、10年もこごさおいどぐんだ。二度と悪いごどはしんだねえぞ」と、いましめました。

それから幾日か過ぎたある日、和尚さんの留守中、機織りをしているおかみさんに、側にいた猫が、誰にも口外しないという約束で、歌をうたって聞かせました。「猫なで声」で、とてもいい声で歌ったのです。

ところが、おかみさんは和尚さんに、そのことを話してしまいました。おこった猫は、その晩、おかみさんをかみ殺して、華蔵院から姿をくらましました。この化け猫の行くへは、今も定かでないということです。

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